103人のキャラが出るゲームを作ってみた

最終更新日

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ノベルゲーム「家事は私を愛するけれど、私は家事を愛せない。」を公開しました。

【公開場所】
■ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/31970
■ノベルゲームコレクション
https://novelgame.jp/games/show/9199

つくったきっかけ

まず、家事のキャラクターたちが脳内でにぎやかに動いていたのが作品作りの発端です。
もともとは「こういう顔でこういうこと言いそう」というただの2,3行のメモ集合体でした。

※イラストは きゅんショタメーカー 様より。クオリティが素晴らしくて感動しました。


↑初期なので名前や服装が微妙に本編と違います。

そのキャラクターたちを1作品にまとめるとしたら、どんな順番で出てきて何を言うのか、全体的にどういうお話になるのかをまとめていくという、「点繋ぎ」の形でこの作品が組みあがりました。

その「点繋ぎ」が自分にとって楽しい作業でしたがかなり難しくもあり、悩んでいる間にも出したい家事のキャラクターは増えていきますし、まとめるのに苦労しました…。

家事の擬人化キャラクターの作り方

例えば「掃除」という家事を擬人化するときは、
・掃除はやってもやっても終わらない。もし掃除氏が生きてたらしつこいに違いない。
・掃除は「掃除機」を使う。掃除機はゴミを「吸う」。「吸う」なら擬人化したら「キス魔」で。
というように、
・家事対象、家事道具のモノから連想
・家事の動作から連想
・個人的感情
…と客観・主観を気にせず連想を膨らませていき、↓のようにまとめたりしてました。

また、自分が知らない家事を洗い出すためには「この一冊ですべてがわかる!家事のきほん新辞典」(藤原千秋, 2014, 朝日新聞出版)のように家事がある程度網羅された本を古本屋で買い漁ったり、家事を見つける視点や質感としては「名もなき家事」(梅田悟司, 2019, サンマーク出版)や家事に関するエッセイを読んだりして、自分の生活の中でも「これは家事と言えば家事だな」と気づくための参考にしました。

そうして見つけた「芳香剤交換」や「冠婚葬祭」といった新しい家事を切り出して認識するたびに「この家事キャラも作ろう!」と喜びに浸っておりました。一人遊び大好き人間です。

して、ルート分岐はどうするか

上記のように無邪気に家事の数を増やしていましたが、キャラクターが増えても作品にはならないので、自分が作るであろうノベルゲーム作品の構成を考え始めました。

過去にも複数の攻略対象がいる乙女ゲーム風の作品はいくつか作った記憶がありますが、「Sweet Painful Utopia」(攻略対象3人)や「ちくわしかない。」(攻略対象5本のちくわ)のようなゲームとは攻略対象の桁数が違うので、「1つ1つの家事の好感度を管理したり攻略対象ごとにENDを準備する」は作る側も遊ぶ側も苦しむのでやりたくありませんでした。

乙女ゲームではないですが「怪盗ドルチェのゲーム」や「クローネとはぐるまのしま」はキャラクター数が多かった作品です。これらは「各キャラクターに関するストーリーを個別に作り、一本道でつなぐ。もっと細かいけど切り捨てたくない話は、ストーリー間の道草要素的に入れる」として作った記憶があります。今回多数の家事が出てくるので「道草要素」として入れる形が良い気がしました。

もう一つ、このゲームを作るときに意識したゲームシステムは「ポラライザ」という過去作品です。16人分のエンドがあり攻略が大変なので、攻略支援システムとして「ストーリーに出てきてほしくない攻略対象を除外できる」という仕組みを入れたりしていました。この家事のゲームも、攻略支援の何らかの仕組みは必要だろうと思っていました。

ということで最初にきっちり決めたわけではないのですが、
・全体的には各家事ごとのENDに枝分かれせず、一本道のストーリーにする
・やらなくていい家事は何らかの形でスルーできる道草要素にする
・後からスルーした家事を拾いやすい仕組みを作る

というイメージで点繋ぎをはじめました。

点繋ぎの点を考える、そうしながら何を書きたいかを探す

まずは一本道を決めます。「洗濯・料理・掃除」は三大家事(パッケージヒロイン?)としてまず顔を出す。「トイレットペーパー補充」や「芳香剤交換」といった「トイレ掃除」に分類される複数の家事は1シーンに全員出る。そうして大体20くらいのサブシーンに分けたあと、12章に押し込みました。

(12章にしたのは、約数が多いので3個ずつの塊にしたり4個ずつの塊にしたり、全体のリズムが作りやすい気がするからです。過去作のドルチェやクローネも同じ理由で、やたら長い話は12章で区切るように頑張るようにしています。)

ここで「金曜に残業から疲れて帰ってきた体も心もグダグダなOLが、土日で家事を一気に片付けてちょっとスッキリする」という全体的な流れができました。

とはいえ家事は面倒くさい。常に完璧に、なんて別にいい。←書きたいことも見つかりました。

ということで「面倒くささ」を演出して「サボる」を肯定する話にする必要が出てきました。

点繋ぎの線部分を書く

103の家事を大体どの章に収めるのかが固まり、書きたいことも見つかってきたので、各家事シーンを書いていきました。

まず、家事のキャラクターはどこか面倒くさい男、手のかかる男の子、でも「こいつ本当に嫌だな」とはならないようにどこか好きになれそうなポイントを作るようにしました。

そして家事のキャラクターは日常の風景から「見つける」道草型にすることを意識して書きました。
例えば鏡に多少の汚れがついていても「鏡が汚れてるな」と思うだけで特に拭かずにスルーする……という感じで、スルーしてしまいそうな情景描写にする。でもやろうと思えば「隠れた家事の表現」を選択することで、その家事をきちんとやりきれる。という形です。特に細かい家事はそうして存在感を消していきました。


↑マウスで触れると隠れ家事「下洗い」が見つかる

最初から家事タスクが全部見えていると(特にフリゲプレイヤーは?)最初コンプしたくなっちゃう気がしますが、その行動は言いたいこととマッチしないので、「まずスルーしてもらう」ことを期待した仕組みでした。後から「スマホとPCでだいぶ難易度が違う」と気づきましたが、考えないことにしました。

「サボる」を肯定するために、家事をスルーして進んだ時はノーマルENDに落としたうえで、そのノーマルENDは希望があるような印象やにぎやかな印象にしてみました。

攻略支援

ENDに1回たどりついたら、出会った家事キャラの設定を見ることができる「家事ずかん」、やり切った家事のサブストーリーにチェックがつく「やることリスト」を見られるようにしよう、としました。


↑「家事ずかん」では見つけた家事の細かめの設定を見ることが可能です。見つけていない家事は「まだ見つけていない」と気づいてもらい「どんな子だろう?」と思ってもらえるように影絵にしました。


↑「やることリスト」では、各章を3stepに分けて、進行度によって何章何stepまで表示するかを変えました。□を並べることで「ラストまであとこれくらい」とわかる効果もある気が、しなくもないです。

この二つがあれば「どの家事を見つけていないか」「見つけてない家事は何章あたりで出てくるのか」が大体わかる!はず!(フルコンプされてる方が少なくとも1名はいるので大丈夫な!はず!)
※攻略は ここ に公開しています

見た目・BGMのテイスト

話がおおかたまとまってきたら、ゲームのUIや演出面を決め始めました。
こちらはストーリーやシナリオ構成と比べると、こだわり・苦労ポイントは少なく、すんなりと決まっていきました。

縦型画面の理由は、通勤時の満員電車でも片手でデバッグしやすいように変えてみたからです。ただ、ふりーむさん・ノベコレさんに掲載するときに縦画面のスクリーンショットは見えづらくなってしまうので、タイトルだけは中央を横長にトリミングでもなんとかなりそうな配置にしました。

←縦画面 ←横画面

ついでに、タイトルに顔を出す家事は毎回変わるようにしました。出てくる家事が多いので「この子可愛い、何の家事の子だろう」って思ってもらえたらいいな…と入れた仕組みですが、気づかれないかも。

ナチュラルで丁寧な暮らしをイメージしたかったので、無印良品のカラーリングやくすみカラーを真似て、立ち絵も(正直、そのままが一番かわいいのですが)色味を調整させてもらいました。

BGMは、おんがくちしきがまるでないのですが「ちるでろーふぁいなかんじ」を探し回り、 zukisuzuki BGM様からお借りすることにしました。おしゃれで落ち着く曲がたくさん公開されていて選ぶのが楽しかったです。制作中にはLUCKY TAPESさんのBLUE feat. kojikoji をよく聞いていました。

実装と制作全体の所感

実装はつつがなく。最初に1章分のスクリプトの型とマクロを作って、手元の付箋に2~12と章数を書いて、机の上のルーズリーフに貼る。実装が終わったら壁に貼り変える。デバッグで気になるところはルーズリーフに付箋を追加して後から手を付ける。を繰り返して、壁の付箋が増える達成感とともに(自分にしては)スピードを出して実装していくことができました。

とはいえ仕事で精神的に絶命状態の時期も長かったので、全くゲーム制作をサボっていたのですが、自分を責めずに、進んだときは進んだことを喜ぶ精神で、作業できたのが良かったかなと思っています。

いつもそうといえばそうなのですが、今回は特に見切り発車で書き始めた創作メモがもととなり、ボリュームが膨れ上がった上に、どうしても制作を諦められなくなった…それがまずかったので、今後は最終的なボリューム感・文字数を強く心に決めた状態で作り始めたいですね。と思いました。

とはいえ、(きっと素晴らしいイラストを描く方が『ペン入れ後よりラフの方が上手かった』と感じてしまうように、)自分の創作に恋をしてしまい諦められなくなってしまうことはどうせ今後もあるので、

そのときはこの103キャラを1つの作品に押し込んだゲーム制作でのたうち回ったことを思い出して、適度に息抜きしながら無理せず作っていきたいですね。とも思いました。
多分、どうしても諦められなくなっているのであれば、そのうち完成するので大丈夫なはず。

これから

「ブルースクリーンの恋人」をさっくりとブラウザ移植できてうれしいので、そのうち出そうと思います。ブラウザだとプレイ感は少し損なわれるかもしれませんが・・・。

また、パンツ同士の百合ゲームも話を書き進めています。友情に近い百合になるかもしれません。

あと現代のキューピッドのお話もまだ書ききっていないのですが・・・。こちらもいつか形になることを信じて、のんびりとやってまいります。

ゆるりとゲームを作ってます。

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